バイト2(ツー)は食人村かもしれない

新しいバイト先への不信感について。

 

1週間前からギャル靴屋ではたらいているけど、その店ではたらく人々に、ただならぬ不信感を抱いている。あの人たちが信用できなさすぎて、もうなんかビルのなかで自分だけがバイトしてるつもりでいて、本当は変な夢を見せられてるだけなんじゃないか、みたいなキモい妄想までしてしまう。というか、妄想であってほしい。

 

不信感①
バイトに応募して面接の予約をしたとき、メールで「もう学生の枠が埋まってて、フル勤務可能の方しか面接できないのですが…」と言われたけど、実際にはたらいてみたら学生のバイトなんかいない。店員は全員フル勤務の社員かフリーター。なぜ最初に学生のバイトがいると嘘をついたのか? 本当は学生のバイトが何人かいて、あたしが入るまでの間に消えてしまったのか?

 

不信感②
面接のときに履歴書をコピーされて、原本を後日持って来いと言われた。なぜ履歴書をその場で受け取らないのか? なぜコピーを取るのか? 何らかの組織に個人情報を売り渡しているのか? どういう目的があるんだろう。

 

不信感③
誰が何円売り上げたのか、その記録がない。ノルマもなければ報酬もない。販売員たちの向上心を高めるような工夫がまったくされていない。記録がないから正確には分からないけど、体感ではあたし個人で1日に10万円ぐらいの売り上げがある。アパレル未経験の新人バイトにしては結構いい成績だと思う。なのに誰も売り上げのことを言わないし、いくら売ったかすら教えてくれない。お局たちから「がんばってね」とは言われるけど、「がんばってるね」とか褒められるようなことは全然ない。この辺りから、自分に求められてるのは売り上げを上げることじゃないのかもしれない、と思うようになった。

 

不信感④
接客のことをほとんど何も教えてくれない。品出しや片付けのことばかり注意される。お客さんに話しかけるときに何を言えばいいのか、何を言ってはいけないのか、何がおすすめの商品なのか、そういう最低限のマニュアルみたいなものを教えてくれない。「先輩を見て覚えろ」みたいな雑な教育。今まで新人バイトを育てたことがないのか、それかやっぱり自分が求められているのは接客能力ではなく、“別の何か”なのか……。

 

不信感⑤
なぜか「はやく来ないで」と言われる。11時15分に店を開けるから、10時50分ぐらいに着くようにしてるけど、なぜか開店ギリギリに来いと注意される。何かバイトに見られたらまずい作業でもしているのか?

 

こういった不信感から、この店の人たちは新人バイトを殺して食ってんじゃないか、自分は人材としてではなく、食材として見られてるんじゃないかーーというキモい発想が生まれてきた。

 

食人村ではないにしても、非常にきな臭い店であることは間違いない。次に、5人のスタッフについて現在分かっていることを書いていく。

 

【お局】金髪のババア。社則違反の青いブレイズのあたしを特別に採用してくれたけど、毎日ヘアスタイルや服装のことで文句を言ってくる。金髪も社則違反なのに、私はいいのって感じ。いつも笑顔で怒ってて気持ち悪い。はやく出勤して謎の段ボールの数を数えているときがある。

 

【店長】アラサーぐらいのギャル。感情的で、言ってることがコロコロ変わる。この人に「はやく来ないで」って2回LINEで注意された。

 

【菊池さん(仮)】アラフォーの男性店員。スタッフには堅苦しい話し方で、お客さん(特に若い女)にはフランクに話してる。ナンパ師だと思う。バンギャっぽいお客さんとLINEを交換してるところを何度か見た。バイト中はめっちゃフォローしてくれるけどプライベートな会話をしたことはない。

 

【吉住さん(仮)】おそらく20代で、ベージュ系の女子。あたしの陰口をあたしの近くで言う。店長に「商品の場所覚えるの遅いから注意した方がいいですよ」みたいなことを囁いて、自分の手は汚さずに何でも店長に言わせようとしてる。あいさつ以外で会話したことはない。

 

【吉沢くん(仮)】20歳ぐらいの男子。持ち場が違うのによく話しかけてくれる。普通に優しいし5人のなかではまだ信用できる人。

 

お局やら社員連中が怪しい動きをしていると思いきや、実は吉住さんが新人イジメの常習だったり、菊池さんがサイコキラーだったりして……。辞めるまでの間に何らかの真実にたどり着きたいので、吉沢くんに探りを入れてみようと思う。